先輩インタビュー
「なんとなく」で、むしろ良い!
高校時代、画家の尾形光琳に魅せられ、日本美術にハマったという及川さん。
大学では美術史を専攻。
美術館で働く学芸員になることを目指し、資格課程を履修することに。
しかし、勉強を進める中で、学芸員として働くことの厳しさ、難しさを知ります。
そこで心機一転、一般企業への就活をスタート。
就職先に選んだのは、なんとなく決めた駒田印刷の営業職でした。
現在2年目をむかえ、ちょっとした変化も感じている及川さんのこれまでの道のりをご紹介します。
プロフィール
東京営業所 マーケティンググループ 及川(おいかわ)
入社:2022年4月
好きな休日の過ごし方:
美術館に行くこと。水族館や大きな公園に遊びに行くのも好きです。
歩き回るのが好きなので散歩もよくします。
ハマっていることはアイドルです。
性格:マイペース、とよく言われます。
座右の銘:流されていても泳げればいい
その出会いは、偶然だった?
- ――
- 昔から、印刷や広告などに興味はあったんですか。
- 及川
- う~ん。どうでしょう?
物心ついた頃から、本を読んだり、絵を描いたりするのは好きでしたけど。
- ――
- 中・高・大と、どんな学生時代を過ごしましたか。
- 及川
- 中学の頃は、演劇が好きでした。
友だちの付き合いで演劇部に入部して、最初はキャストがやりたかったのですが、
裏方仕事なども経験するうちに、舞台を作る大道具や演出が面白くなりました。
- ――
- どんなところが面白いと感じたんですか。
- 及川
- どこが、といわれると難しいのですが、「感覚的に」ですかね。
作っていると没入できるというか。
それで、漠然と将来は、演劇の演出などの仕事がしたいと思ったりしていました。
- ――
- 高校でも演劇を続けたんですよね。
- 及川
- はい。
高校でも演劇部に入って、演劇を続けてはいましたが、
高校2年のときにたまたま見たNHKの「歴史秘話ヒストリア」という番組で、
江戸時代に活躍した琳派の画家、尾形光琳の特集をやっていたんです。
見た瞬間、なんというか心をつかまれて。
色をたくさん使っているわけではないのに、大胆な構図で魅せる技法がすごいなって。
- ――
- それで、どうなったんですか。
- 及川
- 日本美術にハマりました。
それから、月に2回くらい美術館や博物館に通うようになって。
最初は、日本美術から入ったのですが、
いろいろな展示・作品を見るうちに、
西洋美術など美術全般に興味が広がっていきました。
- ――
- 偶然の出会いから始まって、
その後は美術系の専攻に進まれたのですね。
- 及川
- 進路としては、とりあえず自分の興味のある分野に進めたらいいなと漠然と思っていました。
具体的に決めなきゃとなった時点では、
演劇より美術に対する気持ちの方が強くなっていたので、
美術系の大学を受験することにしたんです。
自分で絵を描いたり、創作することも嫌いではなかったのですが、
それよりは、鑑賞したり、学問として学ぶほうがいいかなと思い、
美術史が学べる大学を選びました。
- ――
- 「大学」はどのように決めたんですか。
- 及川
- 特にそこまで深くは考えていなくて、
偏差値などを考慮して、美術史が学べる大学を複数受験しました。
合格したのは、第一志望ではなかったのですが、
読んでいた美術の入門書の著者が教授として勤務している大学だったので、
ここならいいかなと。
- ――
- 大学では日本美術にどっぷりと?
- 及川
- そうですね。
大学で日々専門的な勉強ができましたし、途中で洋画にもひかれることもありましたが、
最終的には日本美術のゼミで卒論を書きました。
あとは、高校時代より自由な時間が増えたので、
美術館めぐりをしたり、屏風や襖絵を見るために京都へ足を運んだりもしました。
- ――
- 及川さんがいちばん好きな美術館は?
- 及川
- 好きな美術館は、根津美術館。
私の一番好きな作品でもある尾形光琳の燕子花図を見るために、
何度も通いました。
美術ひとすじ!と思いきや?
- ――
- まさに、美術漬けの学生時代だったんですね。
- 及川
- いや、実はそうでもなくて。
実際は、いろいろ気が散っていました。
友だちと遊ぶのも楽しかったです。
アイドルも好きで、趣味のあう友だちといろいろおしゃべりする時間が好きでした。
あと、いちばん打ち込んだのは、バイトかもしれないです。
- ――
- アルバイトは何をしていたのですか。
- 及川
- 卒業するまで、ずっと同じチェーン系の喫茶店で接客の仕事をしていました。
勤務は、週3~4日くらいです。
- ――
- 接客のお仕事に興味があったんですか。
- 及川
- いえ、全然。
どちらかというと得意でもないですし。
でも「大学生のバイトといえば喫茶店かな?」というイメージでなんとなく。
それでやってみたら大変で、最初は嫌で仕方なかったんです。
慣れてないこともあり、マニュアル通りにできなくて怒られるし、疲れるし。
- ――
- その嫌なアルバイトが、
そんなに続いたのはなぜ?
- 及川
- マニュアルを覚えて慣れてしまったら、
意外に嫌じゃなくなり、楽しくなりました。
あと、やった分だけお給料がもらえることが嬉しくて。
働いた分、自分の自由につかえるお金ができたのが、
モチベーションになっていました。
- ――
- 大学卒業後の進路については、
ビジョンがあったのですか。
- 及川
- 大学2年生のときに資格ガイダンスがあり、
大学に入ったからには何か資格くらいは取ろうと、
学芸員過程を履修することにして。
将来、美術館や博物館で働く
学芸員になりたいと思っていた時期もありました。
- ――
- 学芸員を目指すのをやめてしまったのは、
なぜ?
- 及川
- 勉強をして分かったのですが、美術館や博物館の学芸員は定員が足りており、
若い人が入りこめる余地がないんです。
しかも、なれたとしても給料が安い。
将来を考えたときにリスクが高いし、
本気で学芸員を目指す覚悟も持てず、
厳しいと思ったんです。
- ――
- その後は?
- 及川
- 普通に就職活動を始めることにしました。
- ――
- 就活は、いつ頃から始めたんですか。
- 及川
- 大学3年の終わり、3月頃です。
まわりの早い子は、3年の春とか夏からインターンシップなどに参加していましたが、
私はやらなきゃという気持ちはありつつも、なかなか行動に移せずにいて。
ダラダラしていたらこの時期になったという感じです。
- ――
- 志望の業界や職種は、どのように?
- 及川
- 特に、これがやりたい的なものもなかったので、
「社会人として働くといったら、金融とか保険かな?」と、
思いついた業界の情報を就活サイトで調べることから始めました。
あとは、消去法というか…。
建築業界は朝早そうだからNG、みたいな感じで
業界をしぼっていきました。
- ――
- 最終的に、印刷業界にした理由はありますか。
- 及川
- 適性診断で「広告・印刷」が上位にあがってきたときに、
しっくりくるかもと思いました。
あとは、昔から演劇や美術館のパンフが好きで収集していましたし、
パッケージなどのデザインを見るのも好きだったので。
そのあたりが重なって、いいかもなと思ったような気がします。
- ――
- 駒田印刷の選考を受けたきっかけを教えてください。
- 及川
- 私が就活をスタートした時期にちょうどコロナ禍になりました。
オンラインでの相談会や面接が主流になる中、何も分からずに不安になっていたんです。
そんなとき、就活アプリの検索でヒットした駒田印刷が、
リアルで説明会をやっていると知ったんです。
実はその頃、エントリーシートを出してもなかなか通らず、
一度も面接を経験したことがなくて、
「このまま夏までいったらマズいかも」と思っていました。
なので、リアルの説明会に参加すれば、
そのまま面接をしてもらえる可能性があるかも?
と説明会に申し込んだのが、きっかけです。
- ――
- それから面接に進めたのですか。
- 及川
- はい。面接を4回して、内定をもらったので就活をやめました。
- ――
- 内定承諾した決め手を教えてください。
- 及川
- 「ここじゃなきゃ」とか「ここで働きたい」という強い思いがあったわけではなくて。
結構流されやすいタイプなので、
当時はそこまで深く考えてなかったというのが正直なところです。
ただ、面接を通じていろんな人に会って、
雰囲気がよかったことは大きいです。
営業同行で実際の仕事を見せていただく機会もあり、
こういう方と働くなら悪くないかもと思えました。
- ――
- 「営業」は、
やりたかったお仕事なんですか。
- 及川
- いえ、本当は企画がやりたかったです。
どちらかというと、考えたり、作ったりっていう仕事が希望でした。
ただ、募集職種が営業職だけだったので、仕方ないというか、
やってみたらなんとかなるかなと思って。
「営業=つらい・大変」というイメージがあったので、
不安もありましたが…。
- ――
- 実際、入社してどうでしたか。
- 及川
- 新人は、最初の3カ月は研修期間で、
電話で新規開拓をする「テレアポ」からスタートするのですが、
それは入社前から分かっていたのでギャップみたいなものは特にありませんでした。
ただ、私は電話をかけるのがすごく苦手で、
いつも緊張しています。
断られるたびに「あ~~~!」と頭を抱えています。
- ――
- テレアポの成功率は
どれくらいなのですか。
- 及川
- 100件かけて、アポイントがとれるのは1・2件くらいですね。
- ――
- ちなみに、どんな断れ方が一番キツイですか。
- 及川
- 「駒田印刷の及川と申します」って社名言った瞬間に、
切られるやつですね。
- ――
- 「向いていない」「嫌だ」と思うことは…
- 及川
- 半々です。
電話も苦手だし、緊張もしますが、
最終的にアポがとれて、仕事に結びつくと嬉しいので。
なんとなく選んだ仕事で、芽生えた思い。
- ――
- 研修を終えて東京営業所の配属になってからは、
どのような案件を担当していますか。
- 及川
- 東京営業所は、大手学習塾がメインクライアントなので、
担当の一人としてその案件をまわしています。
あとは、テレアポで新規開拓をしています。
- ――
- 大手学習塾の案件は、
どのような業務に携わるのですか。
- 及川
- 授業で使うテキストを制作するための打ち合わせ、
原稿の整理、デザインの部門への手配、お客様との原稿確認のやりとりなどです。
- ――
- 新規のテレアポは
どのくらいの頻度で行っていますか。
- 及川
- 一応、ノルマが週に10件なので、
それを目標にやっています。
- ――
- 東京に配属になって
「少し吹っ切れた」と聞きました。
- 及川
- 東京営業所は、メンバーが少なく、口出しもされず、
やりたいようにまかせてもらえる自由な雰囲気なんです。
だったら、苦手なテレアポが少しでも楽しくなるように、
「好きなところへ電話をかけよう!」と思って、
好きな美術館や博物館にテレアポをすることにしたんです。
- ――
- 苦手意識は、克服できましたか。
- 及川
- 今も苦手ですし、電話をかけるのはつらいです。
ただ、アポが取れれば、好きな美術館に行けるし、
美術館の人と話せるので。
それをモチベーションに、なんとかやっています。
- ――
- テレアポの成果はいつごろ?
- 及川
- 東京営業所の配属になってしばらくたった9月頃に、
日本近代文学館様から1件目のアポが取れました。
- ――
- チャンス到来ですね。
- 及川
- 1回目の電話の後に資料をお送りし、
その後担当者から話が聞きたいと連絡をいただきました。
早速商談に伺うと、その担当者が偶然にも日本美術を専攻している学芸員さんで、
意気投合し、話が弾みました。
- ――
- またしても、いい波がきましたね。
- 及川
- そのときはすぐに仕事にはならなかったのですが、
企画展の予定をお聞きしたので、再度12月頃に様子を伺うと、
図録の見積り依頼をいただき、無事に受注につながりました。
- ――
- 受注できた要因は、なんだと思いますか。
- 及川
- 先方の予算に合わせて見積りをお出ししたこと、だと思います。
- ――
- 塾のテキストとは違う、
やりがいがあったとか?
- 及川
- 図録の仕事は、デザイン提案から原稿整理・色校まで行ったため、
印刷物のチュートリアルのような仕事だと感じました。
大量の写真整理があり大変でしたが、
お客様が台割(ページ構成の設計図)を用意し、
原稿もしっかり仕上げてくださったので、
スムーズに進めることができました。
また、自分が好きな分野だったので、
先方から原稿が届くのが楽しみで。
毎回熟読していました。
- ――
- 自分の専門知識や経験が
役に立ったことはありますか。
- 及川
- うーん…。
今思えばですが、図録は大学で研究資料として扱うことが多く、
なじみもありましたし、先方が求めているものがイメージできたというところは、
役に立ったかもしれません。
完成形のゴールを共有できたというか…。
- ――
- 完成したときのお気持ちを教えてください。
- 及川
- お客様からは「デザインがよく、写真がキレイ」と喜んでいただけました。
塾のテキストは、納品後どうなっているか分からなかったのですが、
この仕事で初めてお客様が完成したものを手に取ったところを見て、
反応を聞くことができ、作ってよかったと感じました。
継続して次の企画展のお話をいただけたことも、初めての経験でした。
- ――
- 「図録」のお仕事を機に、
ご自身の中で変化はありましたか。
- 及川
- 今回の図録のお仕事で初めて、「またこのお客様と仕事がしたい」「今後も継続していきたい」という意欲が、
少し湧いてきたかもしれません。
- ――
- 「印刷会社の営業」を1年経験して
仕事に対する印象は?
- 及川
- 意外と楽しいかもしれないです。
入社前は、上司からの指示に従って動くというイメージでしたが、
実際は、テレアポ先を調べるところから電話をかけるところまで、全部自分でやるので意外に自由度が高いと感じました。
印刷が必要な企業はすべてお客様なので、
営業先の範囲が思った以上に広いことも良いギャップでした。
- ――
- 今後の目標を教えてください。
- 及川
- 自分で考えた企画で、仕事をとってみたい。
できれば美術館の企画に携わりたいです。
- ――
- 大学で勉強してきた専門分野や、
演劇の演出など中学時代の好きともつながりますね。
- 及川
- そうかもしれないですね。
ものを作ることは好きなので、
自分の好きなことを生かして企画からやれたらいいですね。
- ――
- 「自分が好きな企業に営業するだけでいいの?」と
思われる方もいるかもしれませんが、どう思われますか。
- 及川
- 私的には逆に好きなところじゃないと話せないので、
少しでも自分が興味のあるところに営業をかけています。
美術に限らず、たとえば化粧品などにも興味があるので、
そういう分野の企業を選ぶことが多いですし。
なので、個人的には好きなところだけでいいと思います。
- ――
- ズバリ、及川さんにとって「働く」とは?
- 及川
- ええっー!?
「働く」ですか?
これから一生働くわけなので、その中で自分の好きなことを…。
うーん、違う。
いや、全然思いつかないです。
まだ、働くことになじんでいる途中というか、
試行錯誤しているところなので。
私は、始まりがぼんやりしていることが多くて、
就活や内定承諾のときですら、結構ふんわり、なんとなくでやってきて。
ただ、そういう中でもやってみたら意外と長く続いたり、
楽しめたりするので、逆にそういうスタンスを大切にやってきたところもあります。
今後、働くうえでもこのスタンスを貫いていこうと思っていますが、
本当にそれでいいのかな?と思う自分もいて。
それも含めて模索中です。
- ――
- では最後に。
就活中の学生さんへメッセージをどうぞ。
- 及川
- 就職活動、迷うことや悩むことが多いと思います。
自分の決断に自信が持てなかったり、後悔しないか不安だったり。
そういうときは思いっきり流されてみるのもアリなのではないでしょうか。
流された先が意外と楽しかったりします。
始まりは「なんとなく」でも問題ないです。
ぼんやりしたところか少しずつ目標とかやりがいとか見つけていきましょう。
ゆっくりでいいです。応援してます。
- ――
- 及川さんの今後がどうなっていくのか、楽しみです。
ありがとうございました。